コラム19 ~『ほら~、浩!起きなさい!』

コラム19 ~『ほら~、浩!起きなさい!』

投稿日時:2021年9月5日

 『ほら~、浩!起きなさい!』

 私が8歳の夏の未明(正確には、1969年7月21日朝5時前)、
母親に起こされて、テレビの前に連れていかれました。
 
 テレビには、「アポロ11号」が月面に着陸する映像が流れていました。
日本時間5時17分、人間が世界で最初に月に着陸した瞬間でした。

 そして、着陸後約6時間 40分後、日本時間11時56分15秒に、人類が初めて、月に降り立ちました。

 アポロ11号による人類初の月面着陸は、全世界人口の20%がテレビ中継を通じて見守ったと言われています。
日本では、アポロ11号による人類初の月面着陸をテレビ同時中継で見た人は68%、21日中に他の番組で見た人を含めると91%に達したそうです。

 私は、宇宙に興味を持つようになり、子供(次男)の名前も宇宙にしました。

 1年後の夏、私は大阪にいました。
新潟の誇り、三波春夫が歌った、「こ~んにちわ~、こ~んにちわ~、握手をし~よ~う~」(「世界の国からこんにちは」)が有名な1970年の「日本万国博覧会(大阪万博)」に、家族で行ったのでした。

 大変な人出(総入場者数6,400万人)で、「太陽の塔」と「アメリカ館」に行ったことだけは覚えています。
「アメリカ館」では、何時間も並び、ようやく入ったところに、「月の石」が展示されていました。
「おー、これがあの時持ち帰った石か!」と感動しました。(後で知ったのですが、万博に展示された石は、アポロ11号ではなく、12号が持ち帰ったものでした。)

 会場が広いうえに、炎天下の中、長時間並んでいたりした私は、疲れ果てて、大阪駅の構内で、新聞紙の上に座っていました。

 周りをみると、ものすごい人数の人たちが、駅構内にひしめきあい、新聞紙に座ったり、横になっていました。

 「とりあえず行けば何とかなる」、「行ってから、ゆっくりホテルを探そう」とみんなが思っていたか不明ですが、もちろん、空いているホテルなどなく、こんなに混むとは誰もが思わなかったのでしょう。ほとんどの人が、駅構内で寝ていました。

 親父は、どこかのブローカーらしきおっさんと立ち話をしてたと思ったら、私たちの所に戻ってきて言いました。

 「よーし、ホテルが決まったぞー」

 連れていかれた所は、大阪郊外の「ラブホテル」でした。
ちなみに、現在では、「ラブホテル」(通称ラブホ)とは言わずに、「ファッションホテル」とか、「カップルズホテル」「ハッピーホテル」とか言うそうです。

 部屋に入ると、真ん中に円形の大きなベッドがあり、私は疲れを忘れて、ベッドの上で飛び跳ねて喜びました。

 さらに、ベッドにはいろいろなボタンがあり、片っ端からボタンを押していたら、急にベッドが回転し始めました。

 ちなみに、「回転ベッド」は、1960年末頃、大阪で発明された日本発祥です。
更にちなみに、1985年の新風俗営業法によって回転ベッドを設置したラブホテルを新設することができなくなってしまいました。

 横の椅子にいた母親は、驚き、怒った口調で言いました。

こら~、浩!止めなさい!